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モグポンとアファ・ルートゥの冒険             第七話『チョコボ……ってなんだろう?』

 

 黄色い毛むくじゃらからアファ・ルートゥを助けたモグポンは、黄色い羽塗れになりながら、地面を眺めました。  地面では黄色い毛むくじゃらが羽根をばっさばさと羽ばたかせながらクェー!と叫んでいます。  初めて見る黄色い毛むくじゃらにモグポンはびっくりしました。  アファ・ルートゥを助けるのに夢中で、相手がなんなのかは見えていなかったのです。  隣を見ればアファ・ルートゥは黄色い毛むくじゃらの涎でぐちょぐちょになっていて、先程お風呂に入ったばかりとは思えない状態になっていました。  そしてなにより、臭いが非常に酷い事になっていたのです。

『二人とも、もう大丈夫だからこっちに降りてきなさい』

 イゼルの声に地面を見ると、地面ではもう黄色い毛むくじゃらをえすてにゃんが取り押さえ始めていました。  既に大粒の涙をぽろぽろと零し始めているアファ・ルートゥに声を掛けてから、モグポンは二人でイゼルの所まで行きました。

『二人とも大丈夫か? 怪我は無いか?』

 地面に降りると柔らかいタオルで包みながら、イゼルは声をかけてくれました。

『だ、だだ、大丈夫クポ……』

『うん……、ぼ…僕もだいじょうぶ……かな』

『それならよかった。まずは二人とも身体の汚れを落とそうか。チョコボはエスティニアンが落ち着かせている。もうこちらに向かっては来ないだろう』

 少し安心してから、モグポンとアファ・ルートゥはイゼルと一緒にもう一度お風呂に行くことになりました。  ぐちょぐちょのアファ・ルートゥをなんとかしなければ、お話どころではないからです。  イゼルは起きたときと同じように、温めたお水を使って泣いているアファ・ルートゥを優しく洗ってくれました。  モグポンはそのままでも良いと思ったのですが、アファ・ルートゥの臭いで気が付かなかっただけでモグポンも酷い臭いをしていたようです。  身体はまだふわふわしているのに、とても不思議でした。

 お風呂でしっかりとぐちょぐちょと黄色い羽根を綺麗にした二人は、イゼルと一緒に居間に行きました。

 居間にはえすてにゃんが居ました。

 二人がお風呂に入っている間に、あの黄色い毛むくじゃらをどうにかしたようです。  イゼルはみんなが揃っていることを確認してから、話し始めました。

『二人とも、なんであんな事になっていたか聞いてもいいかい?』

 イゼルはモグポンとアファ・ルートゥに事の次第を聞いてきましたが、そんな事モグポン達にも分かるはずがありません。

『分からないクポー! いきなりアファ・ルートゥの頭が黄色い毛むくじゃらにがぶってされてたクポー!』

『ぼくもわからないなぁ……。目の前が急に真っ暗になったと思ったら、もうぐちょぐちょだったし……』

 二人はそうなったときの事を取りあえず伝えてみました。  けれども、イゼルもえすてにゃんもなんとも言えない顔をしていました。

『そうか……、二人が何かをした訳ではなかったのだな……』

 イゼルはそれでもなんとか二人の話をわかってくれようとしてくれましたが、えすてにゃんは面倒くさそうに言いました。

『野生のチョコボが急にあそこまで興奮するか? どうせそこのモーグリがなにかしたんだろ?』

 とてもとてもモグポンには不本意な話しです。モグポンはなにもしていないのです。 その事をちゃんと伝えたのに、なんでモグポンのせいになるのでしょうか? それに、モグポンはアファ・ルートゥを助けたのです。  モグポンはその事をもう一度言おうとして、ふとえすてにゃんの言葉が気になりました。

『チョコボ……クポ? チョコボって何……?』

 チョコボとはなんの事でしょうか?  モグポンはアファ・ルートゥを見ましたが、やっぱりアファ・ルートゥもチョコボがなんなのか分かっていなさそうでした。

 モグポンの疑問には、イゼルが答えてくれました。

『あぁ、二人はチョコボを知らないのか。確かに、モーグリ族とドラゴン族ではあまり馴染みが無いかもしれないな。さっきの黄色い鳥をチョコボというんだ。人はあの鳥を捕まえてから訓練して乗り物として使ったりするんだよ』

 イゼルの説明に、二人はきょとんとしました。 『乗り物』という物が分からないからです。

『のり…もの……くぽ? のりものって何……クポ?』

 モグポンの疑問に、イゼルとえすてにゃんはきょとんとしてしまいました。なにか変な事を言ったのでしょうか? モグポンにはいまいち分かりませんでした。  イゼルは直ぐに表情を元に戻して教えてくれました。

『そうか、確かにモーグリ族やドラゴン族は何かに乗る必要は無いものね。人はね、移動する時に自分より速く移動できる何かに乗って、移動するときがあるんだよ。自分で動くよりも速くて、自分は乗っているだけならとても楽ができるだろう?』

 イゼルのお話に、モグポンとアファ・ルートゥはひとつ物知りになりました。  モグポンは頭のポンポンをフルフルさせながら言いました。

『凄いクポー! ニンゲンはとっても頭が良いクポー!』

 そのフルフルさせたぽんぽんを見て、イゼルとえすてにゃんはなんとも言えない表情をさせました。  モグポンは気になって、聞いてみました。

『どうかしたクポ?』

 なんでぽんぽんをフルフルとさせただけでそんな顔をされるのか分かりません。

『その……、だな。もしかしたらとは思うのだが、先程のチョコボは……モグポンのそのぽんぽんを見て興奮したのかもしれない……』

『大方、その丸いのを餌とでも勘違いしたのだろう。餌をみて興奮して狙いが狂ってそっちのドラゴンを口にしたのか』

 確かにモグポンは途中でフリフリした気がしなくもないのですが、それとこれとは話しが別です。二人に腹を立てようとしましたが、隣でアファ・ルートゥが凄く嫌そうな顔をしているのに気が付きました。

『どうしたクポ? アファ・ルートゥもなにか言ってやるクポ!!』

 モグポンは嫌そうな顔をしているアファ・ルートゥにそう言いました。  アファ・ルートゥは、嫌そうな顔のままモグポンに言いました。

『ぼくが食べられたのって、モグポンのせいだったんだね……』

 モグポンはアファ・ルートゥや二人の視線を取りあえず見なかったことにしました。

『モグポンは、あの毛むくじゃらに乗ってみたいクポー!』

 モグポンは、考えるのをやめることにしました。

 モグポンの開き直りを見てからアファ・ルートゥは結局いつもの事だなと思いつつも、モグポンの話しには興味がそそられました。  ドラゴン族である自分は、産まれてこの方、自分の羽根以外では飛んだことはありません。  それに、アファ・ルートゥの身体は地面を速く走るようにもなっていません。  そうなると、地面を速く走るであろうあの黄色い毛むくじゃらに少し興味が湧いてきました。  さっきの事を思い出すと、まだちょっと怖いけれど、地面を速く走るというのがどんなものか気になってしまいました。

『あのね、ぼくももし乗れるなら乗ってみたいかな……?』

 アファ・ルートゥは恐る恐る、イゼルとえすてにゃんに自分も乗ってみたい事を言ってみました。

 イゼルとえすてにゃんはそんなアファ・ルートゥとモグポンに一つ溜息をしてから、言いました。

『アファ・ルートゥがいいならそれでいいけれど、残念な事に野生のチョコボには乗ることはできないんだ』

『訓練されていないチョコボは危険だからな』

 その言葉にアファ・ルートゥとモグポンはしょんぼりしました。

『それじゃ……乗れないの……? 地面を速く走ってみたかったな……』

 アファ・ルートゥが残念そうに言うと、イゼルが顔色を変えて喰い気味で言いました。

『いや、乗れるぞ! うむ。乗れるともさ! 確かにさっきのチョコボには乗れないが、すぐ側にチョコボを訓練している村があるんだ。そこにさっきのチョコボを連れていけばきっと乗せてもらえるはずだ』

 イゼルの言葉に、アファ・ルートゥはパァっと表情を明るくしました。

『やったー! それなら早く乗ってみたいな!』

 アファ・ルートゥがそう言うと、イゼルは笑顔をえすてにゃんに向け、とても優しい声で言いました。

『エスティニアン、さぁ、準備だ』

 イゼルはとっても良い笑顔でした。

 

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