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モグポンとアファ・ルートゥの冒険             第五話『イゼルとえすてにゃん』

  • 執筆者の写真: Eriza Arkright
    Eriza Arkright
  • 2019年2月11日
  • 読了時間: 6分

第五話『イゼルとえすてにゃん』

 手当を終えると、二人のニンゲンは自分の名前を教えてくれました。

『わたしはイゼルという』

『イゼルは優しいクポ! ありがとうクポ!』

 モグポンがそう答えると、イゼルは緩んだ顔のまま優しく微笑んでくれました。  次に、隣を指さしながらいいました。

『こっちの……君たちに酷いことをした男はエスティニアンという。本当に悪いことをした……』

『えすてぃ……? 言いにくいクポね……。えすてにゃんでいいクポ……?』

 モグポンが首をかしげながら聞きました。  イゼルは一瞬目を見開いてから身体を震わせ、堪え切れずに笑いだしてしまいました。

『おい……! 笑い過ぎだ……! あとそこの白いの! 俺はエスティニアンだ!』

『モグポンはモグポンクポ! でも言いにくいからえすてにゃんはえすてにゃんクポ!!』

 モグポンが胸をはって答えると、エスティニアンはとても怖い顔で立ち上がりかけました。  けれど、隣のイゼルがもっと怖い顔で睨むとそっと顔をそむけ、静かに座りました。  イゼルは緩んだ顔に戻ると、聞いてきました。

『その……、君はモグポンというのか。ではこっちのずっと泣いている仔竜はなんというのかな……?』

 アファ・ルートゥは、お尻を刺されてからずーっと泣いたままだったのです。  もしかしたらとっても痛かったのかもしれません。

『アファ・ルートゥクポ! とっても優しいドラゴンの子供クポ!』

『そうか。アファ・ルートゥというのか』

 イゼルは優しい声で言うと続けて言いました。

『それではモグポン、アファ・ルートゥ、改めて謝罪させてほしい。エスティニアンが本当に悪いことをした』

『イゼルが謝ることはないクポ! イゼルはとっても優しいクポ!』

『いや、だがエスティニアンの代わりにせめて謝罪を……』

『それならえすてにゃんが謝るクポ! イゼルは謝る必要はないクポ!』

 モグポンは自信満々に答えました。  イゼルは今までにないくらいのとても優しい笑顔でエスティニアンを見ると、そっと言いました。

『エスティニアン、早く謝罪をするといい』

 エスティニアンは一度びくっと身体を震わせてから、とても嫌そうにいいました。

『その、なんだ。さっきはいきなりだったからな……。俺も悪かった』

『モグポンは大丈夫クポ! アファ・ルートゥはどうクポ?』

 ここまでさんざんだったアファ・ルートゥにも、ようやく発言権が回ってきたようです。  アファ・ルートゥは涙を拭ってちょっとだけモグポンに恨めしそうな目をやってからいいました。

『僕もだいじょうぶ。さっきはびっくりして泣いちゃったけど……。手当もしてもらったし……』

 アファ・ルートゥはどこか納得したくない気持ちも感じました。  けれど、よくよく考えるとモグポンと一緒にいると、結局いつもの事なので仕方ないかと思ってしまったのでした。  イゼルはその言葉を聞いてまだ申し訳なさそうにしていましたが、

『謝罪代わりといってはなんだが、食事の後に君たちの身体を洗わせてくれないか……?』

 モグポンとアファ・ルートゥはイゼルの申し出に顔を見合わせてから、

『お願いするクポ!』

『お願いします!』

 元気に答えたのでした。

 イゼルとえすてにゃんの食事はとても不思議でした。  イゼルの木の器にはなみなみとスープが盛られているのに、えすてにゃんの器にはとても少しの量だったのです。  イゼルはとても優しい笑顔をえすてにゃんに向けていましたが、当のえすてにゃんはばつが悪そうにそっぽを向いていました。

『モーグリ族は食べられるかわからないが、ドラゴン族なら食べられるだろう。アファ・ルートゥ、君も一緒にどうだ?』

 アファ・ルートゥはイゼルの申し出に快くうなずき、一緒にご飯を食べることにしました。  クリムゾンスープと呼ばれるスープは、お肉や植物を一緒に水に入れて熱くしたものでした。  初めて口にするそれは、いままで食べたことのないとても美味しい味わいでした。  みんなで食事を終えると水浴びの時間です。  モグポンもアファ・ルートゥもお空の下に落っこちた時に土だらけになってしまい、とても汚れてしまっていたのです。  これではモーグリ族のふわふわな毛もドラゴン族の優美な鱗も台無しです。  二人はわくわくしながら、イゼルに促されお水の傍に行きました。  すると、またまた不思議な事に、イゼルが火のクリスタルでお水を温めていました。

『それは何をしているクポ……?』

『なんでお水に火のクリスタルをいれてるんだろう……?』

 二人にはまったくわからない事だらけでした。

『あぁ、そうか。君たちは水を温める必要はないのだな。いつもの癖で温めてしまったよ』

『いつもそんな事をしているクポ? お水のまま浴びれば簡単クポ!』

『うんうん。お水のまま浴びればとっても楽だよ!』

 イゼルはそんな二人の言葉に微笑むと、温めたお水を二人の身体に優しくかけ始めました。

『人間はね、毛皮も鱗も持っていないからね。こうして温めてからでないと体調が悪くなってしまうのよ』

『よくわからないけど、モグポンたちとは違うクポね……』

 優しく教えてくれるイゼルにモグポンはとても懐かしい気がして、ちょっとだけ泣きそうになりました。

 そうして、二人がふわっふわでぴっかぴかになると、イゼルがそわそわし始めました。  表情もだいぶ緩んでいます。  モグポンは恐る恐るイゼルに聞きました。

『ど、どうかしたクポ……?』

 イゼルはほっぺたを少しだけ赤くしてからいいました。

『そ、そのだな……。君たちが良ければ、少しばかり君たちを抱きしめさせてほしいのだが……』

 上目遣いにもじもじするイゼルに、二人はちょっとだけ空恐ろしいものを感じましたが、

『い、イゼルは優しいからいい…クポ……?』

 モグポンはアファ・ルートゥの方を見ながら確認をとってみました。  アファ・ルートゥもちょっとビクつきながら、

『と、とっても優しくしてくれたし……それくらいな……』

 もはやアファ・ルートゥは最後まで言わせてもらえませんでした。  イゼルは恐ろしいほどの速度で、二人を抱きしめると、

『あぁ……、もふもふだぁ……つるつるだぁ……』

 緩み切った顔で二人に頬を擦り付け始めました。

『ちょ、ちょっと落ち着くクポ!?』

 二人はイゼルの豹変した姿にぎょっとしてしまいましたが、なすすべなどあるわけもなく……。  あまりの壮絶な頬擦りに二人はイゼルの腕から逃れようとしました。  けれどイゼルは二人を逃がしてはくれませんでした。  むしろ、逃げようとすればするほと、もっと強い力で二人を抱きしめました。  表情はとても見ていられないほど緩み切っていました。  イゼルはそのまま嬉しそうに気持ちよさそうに眠ってしまいましたが、二人は解放してもらえませんでした。

 そしてそのまま、二人はぐったりしながら緩み切った顔のイゼルの腕の中で夜を明かしたのでした。

 このイラストを描いてもらってから、こうして公開するまでに1年以上かかってしまいましたが、どうにかこうにかここまでこぎつけることができました。

 ふーさん、このイラストを描いてくれて本当にありがとう。

 とても大切な宝物です。(*´ω`*)

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