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モグポンとアファ・ルートゥの冒険             第三話『森で出会ったニンゲン』

第三話『森で出会ったニンゲン』

 モグポンとアファ・ルートゥは、わくわくした気持ちを抑えられませんでした。  それもそのはず。  もうすぐニンゲンに会えるのかもしれないのですから。

『ねね、モグポン。ニンゲンに会ったらまずはどうす……』

『イタズラを教えてもらうクポ!』

 言い終わる前に、答えられました。  もう、モグポンの頭のなかにはイタズラの事しかないのかもしれません。  アファ・ルートゥは諦めて先を眺めました。  こんなに長い水の流れは産まれてから一度も見たこともありませんでした。  水の流れの両脇には、ニンゲンが造ったかもしれない建物も壊れてはいたけどいくつかありました。  その建物を眺めていると、アファ・ルートゥもだんだんわくわくが抑えられない気持ちになってきたのです。  自然と二人の歩む速さはあがり、とうとう最後には駆け出し始めてしまいました。  しかし、駆け出し始めてすぐに、二人は木の陰から急にでてきたなにかとぶつかってしまいました。

『『ぷぎゃっ』』

 二人が変な声で地面に転がると、声が掛けられました。

 『こんな所に、竜の仔とモーグリ族……?』

 二人はぶつかったところをさすりながら声の方を見てみました。  そこには。  白くて長い髪を頭から生やした、薄くて細くて枯れた木みたいな生き物が立っていました。  モグポンは不思議に思って聞いてみました。

『何クポ?? もしかしてニンゲン……クポ……?』

 アファ・ルートゥはモグポンの言葉に、なんで急にモグポンはニンゲンとか言い出したんだろうと疑問に思いました。  だって、変じゃないですか。  もし目の前の生き物がニンゲンだったとしたら、どうやって石の建物を造ったというのでしょうか。  ドラゴン族ならまだしも、こんなに細くて薄い生き物が大きい石を持ち上げる事ができるとは思えなかったからです。  そんなことを思いながら様子を伺っていると、目の前の生き物が答えました。

『あ、あぁ。俺は人間……だな』

 ニンゲンでした。  びっくりしました。  おめめが飛び出てしまかもしれないくらいびっくりしました。

『それよりお前らはいったいなんでこんなところに居るんだ?』

 びっくりが収まらないうちに目の前のニンゲンが聞いてきました。

『モグポンたちはニンゲンに会いに来たクポ! さぁ、はやく凄いいたずらをしてみるクポ!!』

 言葉をかけられたことにもびっくりでしたが、モグポンがいきなりいたずらをやってみろといったことにもびっくりしました。

『あぁ?』

 目の前のニンゲンの機嫌が一気に下がったようです。  アファ・ルートゥは当たり前だなと他人事の様に遠いお空を眺めました。

『さぁ、はやくやってみるクポ!!』

 もはやモグポンは止まらないようでした。  アファ・ルートゥはもうなるようになれと、涙目になりました。  機嫌が悪そうな目の前のニンゲンは答えました。

『ようしわかった。そこまで言うならイタズラをしてやろうじゃないか』

『御託はいいクポ! 早くするクポ!』

 ニンゲンはモグポンの言い様にさらに機嫌が悪くなったようです。

『それならこの槍でそのドラゴン族を貫いてやろう』

『嘘クポ! そんなことできるわけないクポ! ドラゴン族のお肌はとっても硬いクポ!』

 なんか怖い話になっていました。  けれど、アファ・ルートゥもモグポンに同感でした。  柔らかくふもふもしているモーグリ族ならいざらしらず、ドラゴン族ではそうはいきません。  ドラゴン族のお肌はとても硬く、なにかで怪我をすること自体、めったにないのです。  けれど、もし本当に刺さってしまったら?  そう思うとアファ・ルートゥはとても怖くなってしまいました。  アファ・ルートゥはそのことを二人に言おうとした時。

『そんなできもしないことでモグポンは騙されないクポ! 早くやってみるクポ!』

 モグポンにニンゲンの前に差し出されました。

『えっ?』

 アファ・ルートゥは一言だけ声を出すと、涙目でモグポンとニンゲンを交互に見ました。

『刺さっても喚くんじゃないぞ?』

 もはやニンゲンは不機嫌を通り越して、怒り心頭といった様子になっています。

 アファ・ルートゥが恐ろしさで涙を零しながらモグポンに助けを求めようと目で訴えると、

『だいじょうぶクポ。ニンゲンのいうことなんて嘘クポ! 嘘を見破ってはやくもっと凄いいたずらを見せてもらうクポ!』

 モグポンはとっても良い笑顔でした。  もはや逃げ場がありませんでした。

『いくぞ』

 アファ・ルートゥは遠いお空を見つめながら、モグポンをイタズラで唆したことを後悔したのでした。  その直後。

 ぷすり。

 ニンゲンのもった槍の穂先が、アファ・ルートゥのお知りに、ほんの少しだけ刺さったのでした。

『ぴぎゃああああああああああああああああああああ』

 とても静かな森に、一匹の仔竜の悲痛な叫びが響き渡ったのでした。

 

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