モグポンとアファ・ルートゥの冒険 第六話『モグポンと森の朝』
- 2019年5月5日
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第六話 『モグポンと森の朝』
朝起きると、モグポンとアファ・ルートゥはまだイゼルに抱きかかえられたままでした。 モグポンは目を擦りながら、イゼルの腕から抜けだそうと思いました。 けれど、イゼルの力は思いのほか強く、モグポンの力だけでは抜け出せそうにありません。 そこでモグポンはアファ・ルートゥを起こす事にしました。 二人でなら、この腕を抜け出せると思ったのです。
モグポンは短い手を必死に伸ばし、アファ・ルートゥのおでこをぺしぺし叩いてみました。 モグポンの短い手ではそれが限界です。 ムニャムニャと良く分からない寝言を言うアファ・ルートゥのおでこを何度か叩いていると、ようやくアファ・ルートゥが目を覚ましてくれました。
やっぱり、アファ・ルートゥも少し眠そうです。 アファ・ルートゥは目蓋を重そうにしながら、反射的に起き上がろうとしましたが、ぴくりとも動きませんでした。
いえ、動きはするのです。
けれど、動こうとするとイゼルがムニャムニャいいながら押さえつけてくるのです。
押さえつけられながら、アファ・ルートゥは身震いをひとつしました。 その瞬間に、モグポンとアファ・ルートゥは目だけで会話をし、覚悟を決めました。 これまでの経験上、寝ている所を起こすといつも酷い目に遭うのです。 ちょっと鼻のなかに花を差し込んでみたり、耳のなかに水のクリスタルをいれてみたり。 ただそれだけなのに。なんで怒られたのか、いまでも非常に不思議です。
しかし、怒られてしまおうとも、もう覚悟を決めるしかないのです。
なぜなら、アファ・ルートゥはちょっとおトイレに行きたくなってしまったから。 モグポンも寝起きにアファ・ルートゥがおトイレに行きたくなることを知っています。
もう、道は残されていないのです。
モグポンとアファ・ルートゥは、冷や汗を流しつつタイミングを合わせて、そっとイゼルの耳の穴に息をふーっと吹きかけたのでした。
『ん……、んん……。なんだ、二人とももう起きたのか……? 朝が早いのだな……』
イゼルはくすぐったそうにしながら穏やかに目を覚ますと、二人を優しく抱きしめ、頬を合わせてきました。
モグポンとアファ・ルートゥはその状況に理解が追いつきませんでした。 なぜ、怒られないのでしょうか? とても、とても不思議です。
二人でイゼルがくすぐったくなるように息を吹きかけたのに、なぜなのでしょう?
状況がおかしすぎて二人が動きを止めていると、イゼルはまたムニャムニャとなにかを言いながら、寝息を立て始めてしまいました。
はっとして、アファ・ルートゥが慌ててまた起きるように息を吹きかけても、イゼルはピクリともしませんでした。
アファ・ルートゥは涙目に。
モグポンは遠い目に。
そして……、限界の時は訪れ……。
『ぴぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ』
静かな森の小さな小屋の中に、絶叫が響き渡ったのでした。
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朝の冷たく澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んでから、アファ・ルートゥは盛大に溜息をつきました。
『はぁ……』
おトイレを我慢できず、イゼルに抱きかかえられたままお漏らしをしてしまったからです。 目の前には、丁寧に洗われてから干されたイゼルの寝間着が掛かっています。 いくら幼いとはいえ、偉大なるドラゴン族の誇りは無残にも砕け散ってしまいました。 イゼルはアファ・ルートゥのお漏らしと同時に目を覚まし、状況を察すると同時に涙目で震えてる仔竜に愕然とし、平謝りしてくれましたが……。
そんなイゼルは、ついでだからと朝食の前に洗濯をしています。 鼻歌交じりに選択をしているその姿を見ていると、また溜息がしたくなります。 薪割りをしていたえすてにゃんが何を思ったのか、
『災難だったな。まぁ、まだ子供でもあるしあまり気にするな』
と、慰めてきました。
余計なお世話だと思いました。
だって、アファ・ルートゥは偉大なるドラゴン族の一員なのです。 年齢など関係ないのです。 イゼルの洗われた寝間着を眺めながら、また溜息をしようとすると今度はモグポンが話しかけてきました。
『アファ・ルートゥ、どうしたクポ? 元気ないクポ』
モグポンにとっては、もう終わったことのようです。 もしかしたら、自由になれたことと怒られなかったことで満足してしまっているのかもしれません。 じろりとモグポンを見ようとした瞬間、
『お漏らしなんて気にすることないクポ! どうせなら、お漏らしドラゴンの名前をほしいままにするクポ!』
アファ・ルートゥはモグポンの言葉にびっくりしました。
そして、自然と瞳に涙が溜まり、
『うわぁああああああああんんん』 アファ・ルートゥは、もう我慢できずに泣いてしまいました。 こんなことを言うモグポンの顔なんて、もうみたくもありません。 目からは、エーテルが豊富な水のクリスタルの様に止めどなく涙が流れています。 もう、かなしくてかなしくて、なにも考えられなくなったとき、アファ・ルートゥは頭をカプッと咥えられました。
(えっ……?)
目の前は真っ暗。酷い匂い。頭の後ろには生暖かく蠢く得たいの知れない何かがあります。
(えっ……? えっ……??)
アファ・ルートゥは余りに突然なことに声も出せずパニックになりました。
その時。
『アファ・ルートゥに何するクポー!』
モグポンの声が聞こえました。 モグポンが体当たりしたのでしょうか、急に空に投げ出されました。 なぜか、モグポンも空でくるくるときりもみしながら飛んでいました。
空中で止まり、落ち着いて地面をみるとそこには、首の長い黄色い毛むくじゃらな生き物が羽根をばさばさと羽ばたかせながら、くえーっ!っと鳴いていました。
二人が顔を見合わせると、騒ぎを聞きつけたえすてにゃんとイゼルがやってきました。
『どうかしたか!?』 『どうした!?』
空中には黄色い羽根まみれのモグポンと、ぐちょぐちょで涙目のアファ・ルートゥ。 下には楽しそうに黄色い羽根をばさばさと振ってクエッー!っと鳴く毛むくじゃら。 その光景をみて困惑した表情のイゼルとえすてにゃん。
みんなで顔を見合わせてから、一呼吸。
『『『『これはどういうこと(クポ)……?』』』』
全員の息が合った瞬間でした。
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