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モグポンとアファ・ルートゥの冒険             第四話『森の中の小さな小屋で』

第四話『森の中の小さな小屋で』

 アファ・ルートゥのお尻に槍が刺さってから数十分。モグポンは必死にアファ・ルートゥに謝っていました。

『ほ、本当にごめんなさいクポ……。まさか本当に刺さるとは思わなかったクポ……』

 モグポンも本当にニンゲンの持つ細い棒がドラゴン族の硬いお肌に刺さるとは思っていなかったのです。

 たしかに、ちょっと普通の棒よりはとがっているなぁとは思ったけれども。

 とはいえ、槍がアファ・ルートゥのお尻に刺さった直後、泣きわめく仔竜に嫌気が差したのか、ニンゲンが言いました。

『泣きわめくなと言ったろう! それでもドラゴン族か! あぁ……うるさい……手当をしてやるからさっさとついてこい……』

 モグポンは理不尽に思いました。

 それなら初めから刺さなければいいのに、と。

 モグポンはもう自分でアファ・ルートゥを差し出したことを忘れてしまっていました。

 しかし、アファ・ルートゥをこのままにしておくことなどできません。

 なんていったって、モグポンはアファ・ルートゥのお兄さんでお友達なのですから。

 モグポンはとても使命感に燃え、泣いているアファ・ルートゥを抱えてニンゲンの後をついていくことにしたのでした。

 しばらくニンゲンの後ろについて進んでいると、木の板でできた建物が見えました。

 もしかしたら、このニンゲンはここに住んでいるのかもしれません。

 モグポンは聞きました。

『ここがニンゲンの住んでいるところクポ?』

 ニンゲンは答えました。  嫌そうに……。

『ああ、そうだ』

 ニンゲンは嫌そうであったけれど、なにかを考えているようでもありました。  モグポンにとってはニンゲンが何を考えているかなんてとてもどうでもいいことでしたが。  ニンゲンは考え事をしたまま小屋の入り口まで行き、そのまま木の板を開きました。  どうやら入り口のようです。  なんで入り口を木の板で塞いでいるのかモグポンにはわかりませんでしたが、とても不便そうなことだけは分かりました。

『戻ったぞ』

 ニンゲンが一言いうと、中から別の声が聞こえてきました。

『おかえりなさい。おつかれさま。今日の夕飯はクリムゾンスープにしてみたよ』

 中から聞こえてくる声はとても優しそうな声音でした。  ふと、モグポンはその声をとあるドラゴンの声と重ねてしまいました。  すぐにぽんぽんをふりふりして気を取り直すと、改めて小屋の中を見てみました。  中には、さっきの不機嫌そうなニンゲンの他にもう一人、やはり白くて長い髪を生やしたニンゲンが立っていました。  不機嫌そうなニンゲンが嫌そうにいいました。

『さっき、このモーグリ族とドラゴン族を拾ってな。少し怪我をしてるから手当をしてやってくれ』

 もう一人のニンゲンがこちらを見ると、モグポンは嫌な気配を感じました。  それもそのはず。  こっちを見て、確認したもう一人のニンゲンの顔が、完全に緩み切っていたのですから。

『こっ、ここっ、これは、どういうことだ……。こんなに可愛い生き物が我が家に来るとは……』

 ニンゲンは必死に緩んだ顔を戻そうとしているようでしたが、完全に無駄な努力でした。

『はっ! そうか、怪我をしているのだったな。早くこちらにきて見せてみなさい』

 必死に緩んだ顔を抑える努力をしているニンゲンに言われ、モグポンはそっとアファ・ルートゥのお尻を見せる事にしました。  ニンゲンがアファ・ルートゥのお尻を確認しながら聞いてきました。

『これは……。なにかに刺されたようだが……? なにで怪我をしたのだ?』

 モグポンは正直に答えました。

『そこのニンゲンに刺されたクポ!』

 モグポンの言葉を聞くなり、目の前のニンゲンはさっきまでの緩んだ顔とは真逆の怖い顔になりました。

『この男がこの傷をつくったのか?』

『そうクポ!』

『待て、誤解だ』

『誤解じゃないクポ! イタズラで刺したクポ!』

『おい! 言い方を考えろ! それじゃ、まるで……』

 お尻を刺したニンゲンは最後まで言わせてもらえませんでした。  なぜなら。  とっても怖い顔をしたニンゲンに殴り飛ばされたからでした。  というか、倒れてから踏みつけられて、その後は馬乗りになって何度も殴られていました。  モグポンは少しだけ胸がすっとした気がしました。

 白くて長い髪をしたニンゲンはひとしきり殴り倒すと、怖い顔がまた凄く緩み、そして、申し訳なさそうな顔に変わりました。

『本当にすまなかった……。いますぐ手当をする……』

 モグポンはアファ・ルートゥをニンゲンに預けながら、色々な事を思っていました。  怖いニンゲンもいれば、不思議なニンゲンもいるんだなぁと。  少なくとも、このニンゲンはモグポン達に危害を加えることはしなそうです。  白い長い髪のニンゲンがアファ・ルートゥの手当てをするのを眺めていると、なにやらお水みたいなものをかけられていました。  アファ・ルートゥには優しく、倒れているニンゲンには乱雑に、しかしかけられると同じように悲鳴を上げていました。  モグポンは少しだけ心配になりましたが、優しいニンゲンのすることだからきっと大丈夫だろうと思いました。

 

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