第二話『初めてのお空の下』
お空に飛びだしてから、ふたりはとても困りました。
飛び出したはいいものの、地面はいつまでたってもまったく見えないのです。
お空の上に比べると、エーテルの濃度もだいぶ薄いようです。
『ねぇねぇ、モグポン……、このまま地面がみえちゃったら危ないんじゃないかなぁ……』
アファ・ルートゥが不安そうな声でモグポンに尋ねました。
しかし、モグポンはきょとんとして、
『どうしてクポ?』
あっけらかんと答えました。
『だってさ、この勢いで地面がみえちゃったら止まれないんじゃないかなぁ……』
モグポンは、はたと気が付きました。
このままでは、本当に止まることができません。
なぜなら、止まるために必要なエーテルが周りにないのですから。
いままではずっととても濃いエーテルの中で暮らしていたのでまったく気が付かなかったのです。
モグポンは急にあわてて、
『これは危ないくぽ!? どうしたらいいクポ!!!??』
アファ・ルートゥに叫び始めました。
アファ・ルートゥもモグポンの慌てようにとても怖くなってしまい、同じように慌て始めてしまいました。
『そ、そんなこと僕にきかれてもー……!』
悪いことは続くようで、慌てることにあわせたように地面が見え始めてきました。
『『あわわあわわわわわわ』』
ふたりはもうどうする事もできずに、じたばたしたままとうとう地面に激突してしまいました。
土煙の中から現れたのは、モーグリとドラゴンの形をした大穴でした。
大穴からなんとかへろへろになりながら抜け出した二人は、とうとう念願のお空の下の地面にたどり着くことができました。
お空の下の地面は、何やら木がいっぱいで水が流れていて、見たこともないような生き物でいっぱいでした。 なにより、お空がとても遠いです。 二人はしばらく木がいっぱいの地面を興味深々で眺めていましたが、直ぐに見慣れてしまいました。 そして、思い出したようにニンゲンを探しにいこうと進み始めたのでした。
二人はまず端っこを目指すことにしました。
お空の上では『端っこ』があるのが当たり前で、そこから次はどこの場所にいけばいいのかを相談するつもりだったのです。 けれど、ふたりはどんなに進んでも『端っこ』を見つけることができませんでした。
ふたりはくたびれくきって、とうとう木の根っこのの所で休むことにしました。
『なんで端っこがないクポー……』
『なんでだろうね……。いつもならこれくらい進んだらどこでも端っこはあるのにねー……』
ふたりはため息をつきながら話し始めました。
『きっと、ここはお空の上の島より、もっともっともーーーーっと大きな島なんだろうね』
『すこし信じられないけど、そうとしか思えないくぽ……』
そう。ふたりは、お空のしたの地面にも『端っこ』があるものだと思い込んでいたのでした。
『もう少し進んだら端っこは見えてくるのかなぁ……』
アファ・ルートゥが不安そうにしながらモグポンに話しかけました。
『モグは目の前のお水がとっても気になるクポ!』
モグポンは、アファ・ルートゥの話をまったく聞いていませんでした。 モグポンはアファ・ルートゥを木の根っこに置いたまま一人で水が流れてるところまで行ってしまいました。 アファ・ルートゥはとても不安の中、モグポンの行動についていけずに根っこのところでへたばってしまうのでした。
アファ・ルートゥのそんな気持ちもしらずに、モグポンはお水のところまでやってきました。 モグポンたちは、こうしてお水が流れていくのを見たことがなかったのです。 モグポンたちが知っているのは、水のクリスタルから湧き出るわずかな湧き水だけ。 こんなにも大量の水を見るのが初めてだったのです。
『このお水はどこのクリスタルから湧き出てきてるくぽ……?』
モグポンは、これだけの水を湧き出させる水のクリスタルがどこかにあるのではないかと、探すことにしてみました。 流れる水に沿って、あっちへいったりこっちへいったり。 モグポンはさっきまでの疲れなんてどっかいってしまったかの様に探し始めたのです。 そんな姿を眺めながらアファ・ルートゥは周りの景色を見てみました。 周りには、お空の上にあったニンゲンたちが造ったといわれる建物がいくつかあったのです。
けれど、どの建物もみんな古びて壊れていました。
『もしかしたら、ニンゲンはもうお空の下にもいないのかなぁ……』
壊れた建物を眺めながらアファ・ルートゥは、急に悲しくなってきてしまいました。 こんなに大変な思いをして、お空の上からお空の下にやってきたのにもうニンゲンがいなかったなんて……。 そう考えると無性に涙がでそうになった、その時。 モグポンの声が聞こえてきました。
『こ、ここ、これは何くぽぉー!?』
アファ・ルートゥはモグポンの声に驚いて、慌ててモグポンの所に飛んでいきました。 そうするとそこには、流れるお水のあっちとこっちを繋ぐように薄べったい木が並べてありました。
『これは……?』
『なに…くぽ…?』
二人は薄べったい木の上に行って、一生懸命考えてみました。 それはどこかお空の上の建物に似てる気がしました。 けれど、お空の上にある建物はみんな石でできています。 周りにある壊れた建物も、みーんな石でできているのです。 ふたりはわけがわからなくなってきてしまいました。 そんな風に二人で頭をひねっていると、モグポンが突然、
『そういえば、お空のしたはあまり石が無いクポねぇ……』
と言いました。
アファ・ルートゥもモグポンの話を聞きながら、周りを見渡してみました。
『そういえば、お空の上とちがって大きい木がいっぱいある……かも?』
アファ・ルートゥがいった何気ない言葉で、ふたりは閃きました。
『も、もしかして、これ、ニンゲンが造ったクポ……?』
『石がないから、かわりに木で……?』
『ま、まさか…クポ』
『で、でももしかしたら、この先にニンゲンがいるのかも……?』
ふたりは顔を見合わせると、さっきまでの疲れはどこかにいってしまったように、目を輝かせ始めました。
『そんな話聞いたことないくぽー!』
『僕も聞いたことないなぁー!』
二人はなにかを確認するように、まったくおもってもないことを口にしてから、
『それじゃ、このまま試しに行ってみるクポ……?』
『ニンゲンなんかいないかもしれないけど、試しに……ね?』
緩んだ顔でわくわくしながら、お水の流れに沿って進み始めたのでした。
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