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モグポンとドラゴン

 あるお空の上に一人のモーグリがいました。

 名前はモグポン。

 モグポンはいつも一人で遊んでいました。

 モグポンの周りに、モグポンと同じくらいのモーグリがいなかったのです。

 モグポンはいつもいつも一人で遊んでいて、とても寂しくなってしまいました。

 モグポンは寂しくて寂しくて、どこかにお友達はいないか探しに行くことにしました。

 お空の上の島の端から端まで探しては、次の島に飛び、また探しては別の島に行き……。

 そうしてると、モグポンはある一頭のドラゴンに出会いました。

 ドラゴンはモグポンに聞きました。

『そこなモーグリ族よ。いったいこんなところで何をしているのだ?』

 モグポンはドラゴンに言いました。

『モグポンはお友達が欲しいクポ……。モグポンの周りはみんな大人ばっかりで、モグポンはお友達がいないクポ……寂しいクポ……』

 モグポンのぽんぽんは寂しさと悲しさのあまりふるふると震えていました。

 ドラゴンは言いました。

『モグポンとやら、いま私はこれから産まれてくる仔の卵を抱えておる。そなたが良ければ共にこの卵の世話をしてはみぬか?』

 モグポンはなんでそんなことを言われるのかがよくわかりませんでした。

 ドラゴンは優しそうな声音で続けました。

『この卵が割れ、中から仔が出てきたら、その仔はおぬしの良き友になるのではないか?』

 モグポンは嬉しくなりました。

 もしかしたら本当にモグポンにもお友達が出来るのかもしれないのですから。

『モグポン、一生懸命お世話するクポ!』

 それから、モグポンのお世話が始まりました。

 卵の殻を磨いてみたり、暖めてみたり。

 時には早く殻から出して上げようと、金槌で卵を割ろうとしてみたり。

 割ろうとした時は叱られてしまいましたが、その後、殻が自然に割れてくるのを待つのだと優しく教えてもらいました。

 そんなある日、モグポンがいつものように卵の所へ行くと、ドラゴンはいませんでした。

 どこかへ出かけているのかと思い、その日はいつもと同じ様にお世話をして帰る事にしました。

 けれど、次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、ドラゴンは帰ってきませんでした。

 モグポンはどうしていいのかわからず、卵のお世話をしながらドラゴンの事を別のドラゴンに聞きにいってみることしました。

 別のドラゴンに聞いてみると、お空の下にお出かけしてもう戻ることが出来なくなってしまったと言われました。

 モグポンは悲しくなりました。

 モグポンはまた一人になってしまったからです。

 これまでの毎日は、ずっとドラゴンとお話をしながらずっと卵のお世話をすることができて、とても楽しかったのです。

 なにより、一人じゃなかったから。

 モグポンは、わんわんわんわん声を上げて泣きじゃくりました。

 卵を抱えながら、来る日も来る日もずーっと泣着続けて、とうとう泣き疲れて眠ってしまいました。

 眠っている間、モグポンの夢の中にドラゴンが出てきました。

 モグポンはドラゴンに言いました。

『モグポン、また一人になっちゃったクポ。また戻ってきて卵のお世話の仕方教えてほしいクポ……』

 しかし、ドラゴンは言いました。

『それは出来ない。私はもうここには戻れないし、これからもっと遠くへ行かなければならぬのだ』

 モグポンはまた泣いてしまいました。

『それじゃ、モグポンはまたずーっと一人になっちゃうクポ……』

 モグポンのぽんぽんも元気がなくなりうなだれてしまいました。

『モグポンよ、おぬしは本当に一人なのだろうか。おぬしの目の前にはこれから産まれてくる友がいるのではないか?』

 モグポンは気が付きました。

 ずっと、ドラゴンとお話が出来たのが楽しくて、一緒に居られるのが嬉しくて。

 一番最初になんでここまでやってきたのかを忘れてしまっていたのです。

『モグポンよ。これから産まれてくる我が仔を頼むぞ』

 そう言うと、ドラゴンは遠いお空の彼方へ飛んでいきました。

 モグポンが夢から覚めると、卵に一筋のヒビが入っていました。

 モグポンは慌てて涙を拭いてから、一生懸命ドラゴンに教えられた様に大切に卵のお世話をしました。

 そうした次の日の朝、太陽が昇ってくる時間に殻はぜんぶ割れ、中から元気な仔竜が出てきました。

 愛くるしい目をしながら仔竜はモグポンに聞きました。

『君、は……?』

 モグポンは、自分にとても優しくしてくれたドラゴンを思い浮かべながら、胸を張って答えました。

『モグはモグポンクポ! 君のお友達クポ! だからこれからずっーとずーっと一人じゃないクポ!』

 そうして、モグポンと仔竜はずーっと離れる事のないお友達になったのでした。

 

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