第一話『モグポンとアファ・ルートゥ』
とあるお空の上の島に、モーグリと産まれて間もない仔竜がいました。
二人はとっても仲良し。
朝起きて、お昼を食べて、夜寝るまでずーっと一緒に遊んでいました。
その日もいつもの通りに一緒に遊んでいると、仔竜が話し始めました。
『ねぇねぇ、モグポン。こんなお話知ってる?』
『なにクポ?? アファ・ルートゥ』
モーグリはモグポン、仔竜はアファ・ルートゥという名前です。
『お空の下にはね、ニンゲンっていう生き物が住んでるんだって!』
『ニンゲン? それって、あっちこっちにある建物をつくったっていう生き物クポ?』
二人はドラヴァニア雲海から人がいなくなってから生まれたので、人間をお話の中でしか知りませんでした。
『でも、なんか怖い生き物だって聞いたクポ?』
モグポンは、お話で聞いたニンゲンを思い浮かべました。
お話の中のニンゲンは、とても偉い竜に酷いことをいっぱいして、いまもずっと続けてると聞きました。
それはとてもとても怖いことで、もしニンゲンに出会ってしまったら、ぽんぽんを引っこ抜かれてしまうかもしれません。
大切なぽんぽんを短い手で抱えようとしているとアファ・ルートゥがいいました。
『でも、大昔はニンゲンといっしょに暮して、色々な事をしていたんでしょう? それなら怖くないニンゲンもいるんじゃないかな?』
アファ・ルートゥはまだ見たことのない人間に興味津々でした。
だから、アファ・ルートゥは目を輝かせて言いました。
『ねぇねぇ、モグポン! 一緒にニンゲンを見に行ってみようよ!』
けれど、そんなことを急に言われたモグポンは、とてもとてもびっくりしてしまいました。
お話を思い出しただけでもぽんぽんがぷるぷると震え上がっているのに、まさか一緒に見に行くなんて……。
『きっとニンゲンもみたら面白いよ!』
モグポンは、まったくそう思えませんでした。
『もしかしたら、面白いいたずらもしてくれるかもしれないよ?』
さらに続ける仔竜くんの言葉で、モグポンは手のひらを返しました。
『面白い…いたずら……クポ?』
モーグリ族にとってその言葉はとても魅力的に思えました。
だって、モーグリ族はいたずらが大好きなのですから。
アファ・ルートゥは、ダメ押しとばかりにいいました。
『ニンゲンに面白いいたずらを教えてもらいにいこうよ!』
モグポンは、もう行かないとは言えませんでした。
思い浮かべるのは、こんなに大きな建物を造ってしまうようなニンゲンが考えるいたずらです。
それはどんなに凄いいたずらなのでしょうか?
モグポンはたまらず、
『アファ・ルートゥ、はやくニンゲンに会いに行ってみるクポ!』
興奮して言ってしまいました。
こうしてふたりはニンゲンに会いに行くために旅に出る事にしたのでした。
ふたりはまずニンゲンがどこに住んでいるのかを話し合いました。
『ニンゲンがお空のしたに住んでいるのは分かったクポ。けど、それはどこから行けばいいクポ?』
『お山を降りていけばいいんじゃないかなぁ』
アファ・ルートゥはなにも考えていませんでした。
『それなら、このままお空を降りていけばいいくぽ!』
モグポンは、もっとなにも考えていませんでした。
ふたりは意気揚々とつぎの作戦を考えました。
『山を降りようとするのは怒られちゃうクポ! それならどこからか飛び降りるクポ!』
『うん。ぼくたちはお空も飛べるもんね! きっとそしたらニンゲンに会えるよね!』
そうして二人は、どこか大人の竜やモーグリに見つかりにくく、そして飛び降りやすい場所を探すことにしました。
もし大人に見つかってしまうと、とても厳しく叱られてしまいます。
ふたりはそのことを思い浮かべると、ぶるっと身体を震わせました。
モグポンは、震えが収まらないぽんぽんを撫でつつ、いいました。
『それなら、遊びながら探すクポ。それなら大人にはばれっこないクポ!』
アファ・ルートゥは感心してしまいました。
『モグポンはあたまがいいね! それならきっとばれっこないよね!』
そうして、ふたりは遊びながら探すことにしたのですが、なかなかいい場所が見つかりません。
それもそのはず。
ふたりで遊びながら探していると、途中で探すのを忘れて遊んでしまうのです。
これではいつまでたっても見つかるはずがありませんでした。
そこでアファ・ルートゥは考えました。
『ねぇねぇ、モグポン。もうこのままここから飛び降りたらいいんじゃないかな』
モグポンは凄いと思いました。
『それはいい考えクポ! いまなら大人も周りにいないクポ! いますぐ飛び降りるクポ!』
ふたりはこうして何も考えずにニンゲンに会いに行くため、お空に飛びだしたのでした。
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